貸金業の業務に必要な「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」について詳しく知りたいです。
今回は気になるポイントの「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」について解説していきたいと思います。貸金業者は、貸付けの条件について広告をするとき、又は貸付けの契約の締結について勧誘をする場合において貸付けの条件を表示し、若しくは説明するときは、貸金業法第15条第1項に基づき、内閣府令で定める事項を表示し、又は説明しなければならないとされています。また、その他の法令や規則にも、「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する規定があります。これらの規定を遵守することは、貸金業者としての信用や社会的責任を果たすためにも重要です。
貸金業の「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」関連法令
- Q「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する規定はどんなものがありますか?
- A
A.ポイントをまとめると
a. 貸金業法では、第15条第1項で表示・説明すべき事項を定め、第15条第2項で電話番号その他の連絡先等について制限を設けています。
b. 貸金業法施行令では、第12条第1項で表示・説明すべき事項の詳細を定め、第12条第2項~第5項で表示・説明方法や広告媒体などについて具体的な基準を示しています。
c. 貸金業法施行規則では、第23条第1項で広告媒体や表示・説明方法に関する報告義務を定め、第26条の14~26条の20で各種広告媒体ごとの表示・説明方法や制限事項などを規定しています。
d. 貸金業者向けの総合的な監督指針では、**Ⅲ-3-2-(1)**で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する監督上の留意点や具体例を示しています。
e. **貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則では、第45条で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する自主規制事項を定め、第46条~第50条で各種広告媒体ごとの自主規制事項を定めています。
f. 電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律では、第3条第1項で電磁的方法による消費者契約の成立に関する特例を定め、第3条第2項で電磁的方法による消費者契約の成立の際に表示・説明すべき事項を規定しています。
g. 不正競争防止法では、第4条第1項第1号で不正表示行為を禁止し、第4条第1項第2号で不正表示行為による不当な利益の供与を禁止しています。 のようになりますので、以下で詳しく説明していきます。参考:貸金業法 – e-Gov法令検索
参考:貸金業法 | e-Gov法令検索
参考:貸金業者向けの総合的な監督指針
参考:広告審査に係る審査基準
「貸金業法、同施行令、同施行規則」における「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」
- Q貸金業法第15条第1項で定められた表示・説明すべき事項は何ですか?
- A
貸金業法第15条第1項で定められた表示・説明すべき事項は以下のとおりです。
- 貸金業者の商号、名称又は氏名及び登録番号
- 貸付けの利率
- 前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
- Q内閣府令で定める事項とは何ですか?
- A
内閣府令で定める事項とは、貸金業法施行令第12条第1項で定められた以下の事項です。
- 貸付けの期間
- 貸付けの返済方法
- 貸付けに係る手数料その他の費用
- 貸付けに係る違約金その他の債務不履行に対する措置
- 貸付けに係る担保又は保証人の有無及びその内容
- 貸付けに係る契約書面の交付方法
- Q表示・説明方法や広告媒体についてはどうなっていますか?
- A
表示・説明方法や広告媒体については、貸金業法施行令第12条第2項~第5項で以下のように定められています。
- 表示・説明すべき事項は、明瞭かつ正確にし、かつ、その内容が容易に判読されるようにしなければならない(第2項)。
- 広告媒体は、新聞、雑誌、ラジオ、テレビジョン放送その他政令で定めるものとする(第3項)。
- 広告媒体が新聞又は雑誌である場合は、表示・説明すべき事項をその新聞又は雑誌の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第4項)。
- 広告媒体がラジオ又はテレビジョン放送である場合は、表示・説明すべき事項をその放送の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第5項)。
- Q貸金業法施行規則における「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」についてはどうなっていますか?
- A
貸金業法施行規則では、第23条第1項で広告媒体や表示・説明方法に関する報告義務を定め、第26条の14~26条の20で各種広告媒体ごとの表示・説明方法や制限事項などを規定しています。
- Q報告義務とは何ですか?
- A
報告義務とは、貸金業者が広告をする場合は、その広告媒体や表示・説明方法について、内閣総理大臣又は都道府県知事に対し、政令で定めるところにより、事前に報告しなければならないという義務です(第23条第1項)。
- Q各種広告媒体ごとの表示・説明方法や制限事項とは何ですか?
- A
各種広告媒体ごとの表示・説明方法や制限事項とは、以下のようなものです。
- 新聞又は雑誌による広告(第26条の14):表示・説明すべき事項をその新聞又は雑誌の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第26条の14第1項)。また、表示・説明すべき事項をその新聞又は雑誌の一部分と区別しやすいようにするために必要な措置を講じなければならない(第26条の14第2項)。
- ラジオ又はテレビジョン放送による広告(第26条の15):表示・説明すべき事項をその放送の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第26条の15第1項)。また、表示・説明すべき事項をその放送の一部分と区別しやすいようにするために必要な措置を講じなければならない(第26条の15第2項)。
- 電話又はインターネットによる広告(第26条の16):表示・説明すべき事項をその電話又はインターネットの一部分と区別しやすいようにしなければならない(第26条の16第1項)。また、表示・説明すべき事項をその電話又はインターネットの一部分と区別しやすいようにするために必要な措置を講じなければならない(第26条の16第2項)。さらに、電話番号その他の連絡先等であつて内閣府令で定めるものについては、これに貸金業者登録簿に登録された貸金業法第4条第1項第7号に掲げる事項に係るもの以外のものを使用してはならない(第26条の17)。
- ポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものによる広告(第26条の18):表示・説明すべき事項をそのポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにしなければならない(第26条の18第1項)。また、表示・説明すべき事項をそのポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにするために必要な措置を講じなければならない(第26条の18第2項)。
- 電光掲示板その他政令で定めるものによる広告(第26条の19):表示・説明すべき事項をその電光掲示板その他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにしなければならない(第26条の19第1項)。また、表示・説明すべき事項をその電光掲示板その他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにするために必要な措置を講じなければならない(第26条の19第2項)。
- 政令で定めるもの以外の広告媒体による広告(第26条の20):表示・説明すべき事項をその広告媒体の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第26条の20第1項)。また、表示・説明すべき事項をその広告媒体の一部分と区別しやすいようにするために必要な措置を講じなければならない(第26条の20第2項)。
「貸金業者向けの総合的な監督指針」における「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」
- Q貸金業者向けの総合的な監督指針とは何ですか?
- A
貸金業者向けの総合的な監督指針とは、財務省が平成19年3月に公表した、貸金業法の施行に伴う貸金業者の業務運営に関する監督上の留意点や具体例を示したものです。貸金業者は、この指針に従って、適正な業務運営を行うことが求められます。
- Q貸金業者向けの総合的な監督指針で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する監督上の留意点や具体例はどんなものがありますか?
- A
貸金業者向けの総合的な監督指針で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する監督上の留意点や具体例としては、以下のようなものがあります。
- 貸付けの利率については、年率換算で表示すること(Ⅲ-3-2-(1)①)。
- 貸付けの利率については、最高利率及び最低利率を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)②)。
- 貸付けの利率については、実質年率又は年利収益率を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)③)。
- 貸付けの利率については、複利計算方式を用いる場合はその旨を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)④)。
- 貸付けの返済方法については、返済期間及び返済回数を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)⑤)。
- 貸付けに係る手数料その他の費用については、その内容及び金額を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)⑥)。
- 貸付けに係る違約金その他の債務不履行に対する措置については、その内容及び金額を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)⑦)。
- 貸付けに係る担保又は保証人の有無及びその内容については、その有無及び内容を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)⑧)。
- 貸付けに係る契約書面の交付方法については、契約書面を交付しない場合はその旨を表示すること(Ⅲ-3-2-(1)⑨)。
- 広告媒体が新聞又は雑誌である場合は、表示・説明すべき事項をその新聞又は雑誌の一部分と区別しやすいようにしなければならない(Ⅲ-3-2-(1)⑩)。
- 広告媒体がラジオ又はテレビジョン放送である場合は、表示・説明すべき事項をその放送の一部分と区別しやすいようにしなければならない(Ⅲ-3-2-(1)⑪)。
- 広告媒体が電話又はインターネットである場合は、表示・説明すべき事項をその電話又はインターネットの一部分と区別しやすいようにしなければならない(Ⅲ-3-2-(1)⑫)。
- 広告媒体がポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものである場合は、表示・説明すべき事項をそのポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにしなければならない(Ⅲ-3-2-(1)⑬)。
- 広告媒体が電光掲示板その他政令で定めるものである場合は、表示・説明すべき事項をその電光掲示板その他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにしなければならない(Ⅲ-3-2-(1)⑭)。
- 広告媒体が政令で定めるもの以外のものである場合は、表示・説明すべき事項をその広告媒体の一部分と区別しやすいようにしなければならない(Ⅲ-3-2-(1)⑮)。
「貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則」における「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」
- Q貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則とは何ですか?
- A
貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則とは、日本貸金業協会が定めた、貸金業者の業務運営に関する基準であり、法令や規則による規制に加えて、貸金業者が遵守すべき事項です。自主規制基本規則に違反した場合は、日本貸金業協会から懲戒処分を受ける可能性があります。
- Q貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する自主規制事項はどんなものがありますか?
- A
貸金業の業務運営に関する自主規制基本規則で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する自主規制事項としては、以下のようなものがあります。
- 貸付けの利率については、年率換算で表示すること(第45条第1号)。
- 貸付けの利率については、最高利率及び最低利率を表示すること(第45条第2号)。
- 貸付けの利率については、実質年率又は年利収益率を表示すること(第45条第3号)。
- 貸付けの利率については、複利計算方式を用いる場合はその旨を表示すること(第45条第4号)。
- 貸付けの返済方法については、返済期間及び返済回数を表示すること(第45条第5号)。
- 貸付けに係る手数料その他の費用については、その内容及び金額を表示すること(第45条第6号)。
- 貸付けに係る違約金その他の債務不履行に対する措置については、その内容及び金額を表示すること(第45条第7号)。
- 貸付けに係る担保又は保証人の有無及びその内容については、その有無及び内容を表示すること(第45条第8号)。
- 貸付けに係る契約書面の交付方法については、契約書面を交付しない場合はその旨を表示すること(第45条第9号)。
- 広告媒体が新聞又は雑誌である場合は、表示・説明すべき事項をその新聞又は雑誌の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第46条)。
- 広告媒体がラジオ又はテレビジョン放送である場合は、表示・説明すべき事項をその放送の一部分と区別しやすいようにしなければならない(第47条)。
- 広告媒体が電話又はインターネットである場合は、表示・説明すべき事項をその電話又はインターネットの一部分と区別しやすいようにしなければならない(第48条)。
- 広告媒体がポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものである場合は、表示・説明すべき事項をそのポスター、チラシ、パンフレットその他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにしなければならない(第49条)。
- 広告媒体が電光掲示板その他政令で定めるものである場合は、表示・説明すべき事項をその電光掲示板その他政令で定めるものの一部分と区別しやすいようにしなければならない(第50条)。
「電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律」における「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」
- Q電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律とは何ですか?
- A
電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律とは、平成15年に施行された、電磁的方法による消費者契約の成立や解除などに関する特例を定めた法律です。電磁的方法とは、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものをいう(同法第2条第1号)。具体的には、インターネットや電話などが該当します。
- Q電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する規定はどんなものがありますか?
- A
電子消費者契約に関する民法の特例に関する法律で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する規定としては、以下のようなものがあります。
- 電磁的方法による消費者契約の成立の際には、契約内容及び表示・説明すべき事項を記録したものを消費者に対して送信しなければならない(第3条第2項)。
- 表示・説明すべき事項とは、契約内容及びその変更又は解除方法である(同項)。
- 表示・説明すべき事項を記録したものとは、電子情報処理組織を使用して記録されたものである(同項)。
- 表示・説明すべき事項を記録したものを送信した場合は、その送信が完了した時点で契約が成立したものとみなされる(同項)。
- 表示・説明すべき事項を記録したものを送信した場合は、その送信が完了した後でも、消費者がその記録を受領しなかったことを証明した場合は、契約が成立しなかったものとみなされる(同項)。
「不正競争防止法」における「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」
- Q不正競争防止法とは何ですか?
- A
不正競争防止法とは、平成5年に施行された、不正表示行為や営業秘密の侵害などの不正競争行為を禁止し、公正な競争秩序を保持することを目的とした法律です。
- Q不正競争防止法で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する規定はどんなものがありますか?
- A
不正競争防止法で「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」に関する規定としては、以下のようなものがあります。
- 不正表示行為とは、自己又は他人の商品、役務又は営業について虚偽又は過大な表示をし、又は他人の商品、役務又は営業について虚偽又は過小な表示をし、もって公正な取引を妨げる行為である(第4条第1項第1号)。
- 不正表示行為による不当な利益の供与とは、自己又は他人の商品、役務又は営業について不正表示行為をし、もって自己又は他人に対して不当な利益を供与する行為である(第4条第1項第2号)。
- 不正表示行為や不正表示行為による不当な利益の供与を禁止する(第4条第1項)。
- 不正表示行為や不正表示行為による不当な利益の供与をした者に対して、損害賠償請求権や差止請求権が発生する(第10条~第12条)。
- 不正表示行為や不正表示行為による不当な利益の供与をした者に対して、刑事罰が科せられる(第21条~第23条)。
おわりに
以上が「貸付け条件等の掲示 ・ 広告」の関連法令になります。監督指針にそって自主規制が策定されるため、重複がありますが、各種広告の時間やスペースの制約の中でしのぎを削って作成されていることがわかります。逆に撤去されていない昔ながらの貸金看板などで現行法律ではNG部分を探してみるというのも面白いです。
以上になります。「貸金業務知識」シリーズは貸金業務毎に関連法案を参照していますが、実際の貸金業務取扱主任者試験に向けては、本シリーズ他の法律や規則も含めて、より深く理解することが必要です。また、実際の業務では、個別の事例に応じて適切な判断や対応を行うことが求められます。そのため、法律や規則だけでなく、事例や判例なども参考にしてください。
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